不妊とｱﾛﾏﾃﾗﾋﾟｰその２

前回の続きで、体外受精のお話からはじめようと思います。

体外受精をする場合には、毎回の自然な月経周期では卵を作るのに、
性ホルモンが逆に邪魔になり、 なかなか大きいのが出来ないので、
人工的な月経周期を作り上げるのだそうです。

そこで使用される薬剤が、スプレキュア。
（最近はセトロタイドという注射も使用されることがあります）
ゴナドトロピンアゴニストということで、
ゴナドトロピ ン（性腺刺激ホルモン放出ホルモン）受容体を強く刺激し、
一旦はゴナドトロピンの量が増えるも のの、ダウンレギュレーションにより、
ゴナドトロピンの分泌が抑制され、
それにより性腺刺激ホ ルモン（ＦＳＨ、ＬＨ）の分泌は減少します。
そのため、ほとんどエストロゲン、プロゲステロン は分泌されなくなり、
ホルモンが分泌されない状態を作り上げます。
これによって、更年期障害の ような状態になるため、
人によっては様々なトラブルと戦わないといけないわけです。
（ホットフ ラッシュ、自律神経失調症など）

その状態を作り、月経が始まったら、ＨＭＧによって排卵を誘発させ、
卵胞がある程度の大きさになっ た所で採卵をし、受精させ、培養します。
受精が成功し、細胞分裂が起こったいくつかの状態の良 い卵を子宮に戻すのです。
そして、２週間ほど心穏やかに生活し、妊娠判定を行うようです。

主にスプレキュアの話を中心に説明しましたが、
体外受精にこういう使い方で用いることも、あまり現場（薬局では）関与しない範疇ですので、
ハッキリ言ってしまえば勉強不足なのですが、こん な使い方もするのか、と勉強した次第です。

ちなみに、おおよその費用ですが、体外受精に成功しようがしまいが、
おおよそ３０～４０万円が 体外受精費用で、
その他に、注射代、薬代など１０万円くらいかかりそうです。
成功率はおよそ３０ ％前後。
薬局に相談にいらした患者様もわらをもすがるような気持ちだったようだと
聞き ましたが、妊娠を望まれる方には本当に深刻なお話です。

結局のところ、このような状態においてこの方は、
医師に相談する前にアロマテラピー、ハーブを試 してもいいものか、
とのことでした。答えはNOです。
先程もお話した通り、ホルモンバランスを薬でここまで
しっかりコントロールしているわけですから、
アロマテラピーやハーブの力が逆に邪魔 になってしまうことも考えられます。

どうしても使いたければ、受精卵を子宮に戻したあとの
"心穏やかに過ごす"期間にリラックスする ような精油を用いて
芳香浴をしてみるといいでしょう。
これが、仮に婦人科で不妊の相談もされて いない方だった場合も、
アロマテラピーやハーブに頼ることはおすすめできません。
妊娠出来る期 間は限られているのです。

確かに不妊治療を受けるには不安もあるでしょう。
しかし、そうだからと言って逃げていても妊娠 出来る期間を無駄に過ごしてしまうだけです。
ハーブやアロマテラピーは補助療法で"治療"ではな いのです。
まずはきちんと医師に相談しましょう。
医師に相談して納得いかないようであれば、
３件以上は別の医療機関の医師に相談する。まずはそこ からです。
深刻に悩めば悩むほど、何かにすがりたくなる。
だからといって代替医療は魔法ではな いのです。

私は、アロマテラピーやハーブがこういう場合には有効ですが、
この範囲では治療や薬に頼った方 がいい、
という線引きが出来るそういう薬剤師になりたいものだといつも思わずにはいられません。
そのためにも、医薬品についてもハーブ、アロマについてももっと勉強していかねばと思いました。

今回はかなり真面目なお話でしたが、このへんで。